AIエージェントの急速な導入は、企業の業務運営を変革しています。複雑なプロセスの自動化、意思決定の迅速化、かつてない生産性の向上が実現しています。これらの自律型デジタル ワーカーは、人間の監督なしにユーザーとやり取りしてシステムとデータを扱うことができるため、ビジネス ワークフローを根本から刷新します。しかしこの変革には重大な課題、すなわちAIエージェントは急速に拡大する攻撃対象領域(アタック サーフェス)をもたらし、それは従来のセキュリティ モデルでは対応不能であるという課題が伴います。
AIエージェントが機密システムにアクセスして影響が大きいアクションを実行するようになると、AIエージェントの保護とガバナンスはIT部門の懸念事項に留まらず、戦略的なビジネス上の必須事項となります。
AIエージェントのID管理における課題
AIエージェントが行うすべての行動は、自動承認からデータ分析に至るまで、特定のIDに紐づいて行われます。ただし、一般的な人間のユーザーとは異なり、AIエージェントにはタスクを効率的に実行するため、システム間をまたぐ広範な特権が付与されることがよくあります。そのため、AIエージェントは組織内で最も強力でありながら、潜在的にリスクの高いIDの1つとなっています。
金融業界のあるAIエージェントを例に考えてみましょう。このAIエージェントは金融データの集約、信用履歴の分析、条件の作成、引受の促進、利害関係者とのコミュニケーションまで、融資プロセス全体を処理できます。効率性は驚異的なものの、リスクもまた重大です。適切に制御されなければ、同じエージェントがデータを誤って解釈し、ハイ リスクな融資の承認や顧客情報の誤った漏洩を引き起こし、コンプライアンス違反や風評被害につながる可能性があります。
AIエージェントは年中無休で稼働します。機械の速度で継続的に動作し、自律的に意思決定を下してアクションを実行します。この独立性には、堅牢な監督、リアルタイムの可視性、説明責任の強化が不可欠です。
隠れたリスクはすでに遍在している
最新のSailPointの調査によると、AIエージェントを使用している80%を超す組織が、システムへの不正アクセスや偶発的な情報漏洩など、エージェントの意図しない挙動を経験しています。驚くべきことに、一部のAIエージェントがクレデンシャルの危殆化や制限されたタスクの実行を強要されたケースさえありました。
以上は仮説のシナリオではなく、今日の企業環境で実際に発生しているインシデントです。そしてその根本原因は、ガバナンスと可視性の欠如にあります。多くの組織は、AIエージェントがアクセスするデータ、アクセス権許諾の付与方法、または設定されている監視方法を把握しないまま、AIエージェントを導入しています。調査対象企業のうちAIエージェント用に正式なガバナンス フレームワークを用意しているのはわずか44%で、大多数が無防備な状態にあります。
AIエージェント統制の新たなセキュリティ対策
AIを活用した変革には、AIエージェントを最優先クラスのIDとして扱う、最新のアイデンティティ セキュリティ アプローチが必要です。つまり、AIエージェントがある場所を特定し、そのエンタイトルメントを理解し、その挙動を監視し、人間とマシンIDに使用されているガバナンス基準と同水準の厳格なガバナンス基準を適用するということです。
この変化をサポートすべく、SailPointは最近、SailPoint Atlasプラットフォームを基盤とする新しいソリューション「Agent Identity Security」を事前発表しました。このソリューションは年内にリリース予定です。このソリューションによって企業は、アクセスの制御とリスクの大規模な削減に必要なインテリジェンス、自動化、コンテキストを用いて、AIエージェントを統制して保護できるようになります。
AIエージェントの運用はアイデンティティ セキュリティから
AIの可能性は計り知れませんが、IDベースの制御がなければすぐに負担になる可能性があります。アイデンティティ セキュリティ戦略の一体化を通じてAIエージェントを管理することで、イノベーションのためにコンプライアンス、セキュリティ、信頼を守ります。
AIエージェントを効果的に保護するには、組織は次を実施する必要があります。
- アクセス ポリシーの定義:誰あるいは何が、どのリソースに、どのような条件下でアクセスできるかを決定します。
- 挙動の継続的な監視:異常を検知し、リスクを評価し、必要に応じてアクセスを取り消します。
- ポリシーベースのガードレールを適用:AIエージェントが、必ず規制・倫理基準に準拠した承認済みの境界内で動作するようにします。
AIイニシアチブを強力なID基盤に結び付けることで、企業は完全な制御を維持しながら価値を引き出すことができます。
まとめ
企業が変革を推進するためにAIエージェントへの依存度が高まるにつれ、ID中心のガバナンス の必要性もかつてないほど高まっています。AIエージェントが行うすべてのアクションはコンプライアンス、データの整合性、組織の信頼に影響を与える可能性があるため、AIエージェントの保護とガバナンスは不可欠です。
アイデンティティ セキュリティ戦略の一体化は単なるベスト プラクティスではなく、安全で責任と拡張性があるAI導入の基盤となります。
免責条項:本書に記載されている情報は情報提供のみを目的としており、本書の内容はいかなる形の法的助言も提供するものではありません。SailPointはそのような助言を行うことはできないため、該当する法的問題については弁護士に相談されることをお勧めします。