目次
BYOD端末とは?
BYODとは「Bring Your Own Device」の略で、従業員が自分のスマートフォンやパソコンなどを仕事に使い、会社のデータやネットワーク、アプリケーションなどにアクセスすることを指します。このアプローチは従業員に柔軟性と利便性をもたらし、生産性や満足度の向上につながる可能性があります。
しかし、BYODには、企業リソースの保護、端末の互換性管理、そしてコンプライアンス遵守といった面で課題も伴います。効果的なBYODプログラムには、実際のユース ケースやユーザーおよび管理者のロール(役割)に即したポリシーが含まれています。
本記事では、BYOD端末の種類やメリットやデメリット、運用のポイントなどを解説します。
BYODポリシーの対象となる端末の種類
多くのBYODポリシーは、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンを主な対象としています。それ以外の端末については、より厳格なルールが設けられるか、BYODの対象外となることが多いです。
- スマートフォン:メール、メッセージング、アプリケーションで最も一般的に利用されるBYOD端末
- タブレット:主に生産性向上アプリケーション、リモート ワーク、フィールド オペレーションで利用される端末
- ノートパソコン:多くの業務タスク、リモート アクセス、社内アプリケーションで利用される端末
- ウェアラブル端末(例:スマートウォッチ):利用頻度は低いものの、社内アプリケーションへの接続や通知の受信に使用されることがある端末
- 個人のデスクトップ:リモート ワークやハイブリッドな勤務環境で利用される端末
- IoT端末(例:プリンター、スキャナー、カメラ):セキュリティ リスクが高いため、通常は制限されるか、限定的に扱われる端末
職場におけるBYODの運用シナリオとポリシー
BYODポリシーでは、業界を問わず、安全なアクセス、データ保護、公私の区別、インシデント対応、退職時の端末処理などに対応する必要があります。以下の例は、職場におけるBYODの影響と、セキュリティや生産性を損なうことなく運用を実現するためのポリシーを示しています。
メールおよびメッセージングへのアクセス
セキュアな通信を確保するため、モバイル端末管理(MDM)に登録され、かつ多要素認証(MFA)をサポートする個人端末のみに対して、社内メールおよびメッセージング アプリケーションへのアクセスを許可します。
ファイルおよびドキュメントへのアクセス
暗号化、データ損失防止(DLP制御)、ローカル ダウンロードのブロック機能を備えた承認済みアプリケーションを通じてのみ共有ファイルにアクセスできるように制限し、機密ファイルが個人端末上に保護されていない状態で保存されることを防ぎます。
リモート ワークでの接続
安全でないネットワークや管理されていない端末から企業のリソースを保護するため、リモート接続を行う従業員には、会社が承認したVPNクライアントの使用と、端末に対して設けたセキュリティ基準(例:最新のパッチが適用されたOS、ファイアウォール、ウイルス対策ソフト)の遵守を求めます。
プライベートと業務の分離
従業員のプライバシーと企業データの保護を両立させるため、企業のアプリケーションとデータを、個人用アプリケーションとは分離されたセキュアなコンテナ内に保持することを義務付けます。
紛失または盗難に遭った端末
侵害された個人端末からのデータ流出を防ぐため、従業員に対して、端末の紛失または盗難を24時間以内に報告することを義務付け、IT部門が企業のコンテナを遠隔でロックまたは消去できるようにします。
アプリケーションの使用制限
セキュリティ脆弱性を引き起こす高リスク端末を防ぐため、脱獄(ジェイルブレイク)またはルート化された端末をブロックし、承認されていないアプリケーションを実行している端末が企業システムへアクセスできないようにします。
退職および契約終了
個人所有を尊重しつつ企業情報を保護するため、退職時には個人のデータはそのまま保持した状態で、従業員の企業データおよびアプリケーションへのアクセス権限を削除します。
BYODはCYODやCOPEとの違い
BYODは一般的なモデルとして広く採用されていますが、自分で端末を選ぶ、CYOD「Choose Your Own Device)および企業が選定した端末を従業員に支給する、COPE「Corporate-Owned, Personally Enabled」との違いを正しく理解することが重要です。以下では、BYODとこれら他の端末管理モデルとの主な相違点を表でまとめています。
項目 | BYOD(Bring Your Own Device) | CYOD(Choose Your Own Device) | COPE(Corporate Owned, Personally Enabled) |
|---|---|---|---|
端末の所有者 | 従業員 | 会社 | 会社 |
端末の選定・購入 | 従業員が自ら選定・購入 | 会社が承認済み端末リストを用意し、従業員が選択 | 会社が選定・購入 |
主な利用目的 | 私用が中心だが業務にも利用可 | 主に業務利用 | 主に業務利用 |
管理・制御の範囲 | 企業による制御は限定的(データ・アプリ中心) | 企業が端末を完全に管理 | 企業が完全に管理 |
セキュリティレベル | 低い(リスクが高い) | 中程度(BYODより強固) | 高い(最も強固) |
企業側のコスト | 低い | 中程度 | 高い |
従業員の自由度 | 高い | 中程度 | 低い |
メリット | コスト削減、利便性、満足度向上 | セキュリティ強化、サポート標準化 | セキュリティ最強、データ管理が明確 |
デメリット | セキュリティリスク、プライバシー懸念、サポート複雑化 | コスト増、自由度制限 | コスト高、自由度低、従業員不満の可能性 |
以下、それぞれ解説します。
BOYD(Bring Your Own Device)
BYODでは、従業員が自分の端末を業務に使用できます。BYOD端末モデルの主な特徴は次のとおりです。
- 従業員が所有
- 従業員が自ら端末を選定し購入する
- 主に私用目的で使用され、企業システムへのアクセスが可能
- 端末全体に対する企業側の制御は限定的で、IT部門は企業のデータとアプリケーションの保護に重点を置く
- メリット:企業のコスト削減、従業員満足度の向上、自分の端末を活用できる利便性
- デメリット:重大なセキュリティ リスク、プライバシーへの懸念、そして複雑なITサポート
CYOD(Choose Your Own Device)
CYODでは、組織が支給・管理する承認済み端末の中から従業員が選択します。CYOD端末モデルの主な特徴は次のとおりです。
- 会社が所有
- 会社が支給する承認済み端末リストの中から従業員が選択する
- 主に業務関連で使用され、一部の私的利用が許可される場合がある
- 端末は会社所有で、IT部門が管理するため、企業による完全な制御下に置かれる
- メリット:セキュリティがBYODよりも強固、サポートの標準化が可能、従業員の選択範囲を制限できる
- デメリット:BYODよりもコストが高い、従業員の選択自由度が低い
COPE(Corporate Owned, Personally Enabled)
COPEでは、組織が従業員に端末を支給し、それを業務および限定的な私的利用の両方に使用できます。COPE端末モデルの主な特徴は次のとおりです。
- 会社が所有
- 会社が端末を選定し購入する
- 主に業務関連の作業で使用されるが、私的利用も明示的に許可され、IT部門によって管理される
- 端末は企業の完全な制御下にある
- メリット:セキュリティと制御が最も強固、サポートの標準化が可能、データの所有者を明確にできる
- デメリット:企業にとってコストが最も高い、従業員の選択自由度が最も低い、私的利用の制限が厳しすぎる場合は従業員の不満につながる可能性がある
BYOD導入のポイントと求められるセキュリティ対策
BYODは柔軟性をもたらす一方で、重大なセキュリティ リスクも伴います。明確なBYODポリシーと適切なセキュリティ プロトコルを整備することで、組織は機密性の高い業務情報を保護しつつ、従業員の個人端末利用を尊重し、過度な負担をかけずに運用できます。
BYODポリシーの主な11の要素
強固なBYODポリシーは、セキュリティ、コンプライアンス、従業員のプライバシーのバランスを取りながら、ユーザーとIT部門双方のロール(役割)と責任を明確に定義します。以下は、BYODポリシーの基本的な構成要素です。これらは、組織固有の要件(重要な機密情報に対するコンプライアンスや強化されたセキュリティ プロトコル)に対応する追加の指針によって補完することもできます。
- 個人端末の利用要件
企業のリソースに接続できる個人端末の種類を定義します。最低限必要なOSバージョン、セキュリティ機能、サポート対象プラットフォームなどの技術的要件を明確にして互換性を確保し、リスクを低減します。 - 登録および認証
従業員に対し、個人端末をIT部門またはモバイル端末管理(MDM)プラットフォームに登録することを義務付けます。これにより、企業システムへアクセスする前にセキュリティ基準を適用・維持できるようにします。 - 私的利用と業務利用の区別
個人端末でアクセスできる企業のシステム、アプリケーション、データの範囲を制限します。また、私的利用に該当する行為を明確に定義して誤用を防ぎ、従業員のプライバシーおよび企業システムを保護します。 - セキュリティ要件
セキュリティ対策による制御(多要素認証(MFA)、強力なパスワードまたは個人識別番号(PIN)、暗号化、VPNの利用、定期的なパッチ適用など)を必須とします。さらに、マルウェア対策ツールおよび遠隔消去機能の導入を義務付け、端末の紛失や盗難時にアプリケーション、データ、ネットワークへの不正アクセスを防止します。 - データ保護とプライバシー
企業データを個人データから分離する方法(コンテナ化や個別プロファイルの利用など)に関するルールを定めます。また、プライバシー、セキュリティ、コンプライアンスを維持するため、IT部門が監視できる内容と監視できない内容を明確にします。 - 包括的なBYODポリシーを策定する
- BYODポリシーでは、全員の責任を明確にし、従業員に求められる事項と組織が提供するサポート内容を具体的に示す必要があります。また、業務目的で個人端末を使用する際に、どのような利用が許容され、どのような行為が不適切とされるのかを明確にするため、許容利用範囲を定義することも重要です。
- 従業員の責任
セキュリティに対する共通の説明責任への意識を確立するため、従業員の義務を明確にします。これには、端末を常に最新の状態に保つこと、紛失や盗難が発生した場合は直ちに報告すること、セキュリティ制御を無効化しないことなどが含まれます。 - 企業およびIT部門の責任
IT部門の役割を定義し、サポートの提供、コンプライアンスの遵守、適切なデータ管理を実施します。これにより、従業員個人のアプリケーション、写真、通信内容がプライバシーとして保護されることを保証します。 - インシデント対応とポリシーの適用
セキュリティ インシデント、ポリシー違反、コンプライアンス違反に対応するための明確な手順を策定します。是正措置に関する詳細(アクセス制限や懲戒手続きなど)も定め、一貫性と実効性を維持します。 - 退職・オフボーディング手続き
従業員が退職する際に、個人端末から企業データを削除し、アクセス権限を取り消すための手順を策定します。これにより、システムや情報への不正アクセスを防止します。
BYODにおけるセキュリティ リスクへの対処
BYODプログラムにおけるセキュリティ リスクを軽減し、データ保護を確保するには、以下の技術的な対策を検討する必要があります。こうしたセキュリティ システムと対策は、データ侵害、マルウェア、機密情報の流出といった一般的なBYODリスクを特定・防止するのに役立ちます。
- アプリケーションの許可リストおよびブロック リスト:リスクの高いアプリケーションや未承認のアプリケーションを制限し、エンタープライズ アプリケーション ストアの利用を徹底させます
- データ損失防止(DLP):データ転送、コピー、クラウド同期を監視および制御します
- 端末コンプライアンス チェック:アクセス権限を付与する前に、OSのバージョン、パッチ レベル、セキュリティ設定が基準を満たしていることを確認します
- エンドポイント保護:マルウェア対策、ファイアウォール、モバイル脅威防御(MTD)を実装します
- フルディスク暗号化:端末にローカル保存されたデータを保護します。
- ログの記録と監視:端末およびアクセスのログを収集して、異常を検知します
- モバイル端末管理(MDM)および統合エンドポイント管理(UEM):ポリシーの適用、企業データのコンテナ化、遠隔消去を実施します
- 多要素認証(MFA):企業アプリケーションおよびVPNのログイン セキュリティを強化します
- リモートでの消去およびロック:端末の紛失や盗難時に、即時対応を可能にします
- セキュア ネットワーク アクセス制御:証明書ベースの認証を伴うVPNまたはゼロトラスト ネットワーク アクセスの利用を必須とします
導入前に知っておきたいBYODのメリットとデメリット
BYODのメリット
BYODプログラムは、組織と従業員の双方に多くのメリットをもたらし、現代の職場における普及を後押ししています。主なメリットは次のとおりです。
主なメリット | 概要 |
|---|---|
人材の確保と定着 | 柔軟な働き方を提供し、優秀な人材の確保・離職防止につながる |
従業員満足度の向上 | 好みの端末を使えることで快適さとモチベーションが向上 |
環境への配慮 | 企業の端末購入・廃棄を減らし、環境負荷を軽減 |
テクノロジー導入の迅速化 | 個人端末の更新が早く、新技術への対応が迅速 |
柔軟性とモビリティ | どこでも業務可能で、リモートワークや出張に適する |
災害復旧の強化 | 災害時もリモートアクセスで業務を継続できる |
生産性の向上 | 使い慣れた端末で効率的に作業できる |
IT部門の負荷軽減 | 管理対象端末が減り、IT部門の負担が軽くなる |
以下、それぞれ解説します。
人材の確保と定着
BYODプログラムを導入することで、柔軟な働き方や現代的な職場ポリシーを求める候補者にとって、組織の魅力を高めることができます。
従業員満足度の向上
BYODポリシーは、従業員が自分の好みの端末を使用できるという柔軟性や、企業が示す信頼を評価することで、職務満足度の向上につながります。従業員はまた、自身の嗜好や業務ニーズに最も適した端末やOSを選択できる点も好ましく感じます。
環境面でのメリット
BYODは、企業によるハードウェア購入・廃棄の必要性を減らすことで、環境の持続可能性への取り組みに貢献できます。電子端末の製造や廃棄に伴うカーボン フットプリントや電子廃棄物を削減できるからです。
テクノロジー導入の迅速化
組織は、新しいテクノロジーやソフトウェアをより迅速に導入できるようになり、機動性と競争力を高めることができます。これは、従業員が組織よりも頻繁に個人端末をアップグレードする傾向にあるからです。
柔軟性とモビリティ
BYODポリシーは、より柔軟でモバイルな働き方を可能にし、従業員が場所や時間に関係なく業務を行えるようにします。これにより、柔軟な勤務形態が実現し、リモート ワークやモバイル ワーク、頻繁に出張する従業員の働き方もサポートできます。
災害復旧の強化
職場に影響を及ぼす災害が発生した場合でも、BYODポリシーを導入している従業員は、重要な業務データやアプリケーションにリモートでアクセスできるため、大きな支障なく業務を継続できます。
生産性の向上
従業員は自分の端末に慣れており、操作にも習熟しています。そのため、業務を遂行する際の効率が向上します。
IT部門の業務負荷を軽減
従業員が自分の端末を使用することで、IT部門が直接管理する端末の数が減り、業務負荷を軽減できます。その結果、IT担当者は他の重要な業務に集中できるようになります。
BYODのデメリット
BYODポリシーには多くのメリットがありますが、同時に組織が適切に管理すべきさまざまなリスクも伴います。企業データとネットワークのセキュリティと完全性を維持するためには、こうしたリスクを理解し、軽減することが不可欠です。以下は、BYODに関連する一般的なリスクです。
主なデメリット | 概要 |
|---|---|
データ漏洩 | 個人・企業データ混在による情報漏洩リスク |
管理・サポートの複雑化 | 端末やOSの多様性により、管理・サポートが難しい |
プライバシー懸念 | セキュリティ対策と従業員のプライバシーの両立が困難 |
端末制御の欠如 | 個人端末ではソフトウェア更新や設定統一が困難 |
端末の紛失・盗難 | 紛失時のデータ流出リスクや対応の遅れが懸念される |
ネットワークセキュリティ | 個人端末接続により企業ネットワークが脆弱化 |
その他のセキュリティリスク | マルウェア感染や安全でないWi-Fi利用による脅威 |
以下、それぞれ解説します。
データ漏洩
個人データと企業データが同一端末上で混在すると、意図しないデータ漏洩につながる可能性があります。従業員が端末を友人や家族と共有した場合や、端末を紛失した場合には、機密情報が漏洩するおそれがあります。
端末の管理とサポートの課題
BYODは端末購入にかかるコストを削減できる一方で、IT部門の負担を増大させる可能性があります。セキュリティ、サポート、利用ガイドラインを網羅した包括的なBYODポリシーを策定するには、多大な労力と継続的な管理が求められます。これは、端末のセキュリティ管理、幅広い種類の端末に対するサポート提供、企業データの保護を行うための対応が必要となるからです。さらに、ITチームは多様なプラットフォーム間で企業リソースへの一貫したアクセスを確保する必要があります。
従業員のプライバシーに関する懸念
組織がデータを保護する必要性と、従業員のプライバシー権とのバランスを取るには、複雑な対応が求められます。個人端末に特定のセキュリティ対策を実装することで、従業員のプライバシーや同意に関する懸念が生じる場合があります。
端末制御の欠如
会社支給の端末と比較すると、組織は従業員の個人端末に対して、ハードウェアやソフトウェアの制御が制限されています。この制御の欠如は、アップデートやパッチ、セキュリティ ソフトウェアのインストールにも及び、端末が新たな脅威にさらされる要因となります。その結果、ITポリシーの適用、更新作業の実施、すべての端末で互換性とセキュリティを確保することが難しくなります。
端末の紛失または盗難
企業の機密情報を含む個人端末が紛失または盗難に遭うと、データ セキュリティに重大なリスクをもたらす可能性があります。こうした端末からデータを復旧したり、リモートで消去したりすることは容易ではなく、特に従業員が紛失した旨を速やかに報告しない場合には対応がさらに困難になります。
ネットワーク セキュリティ
個人端末が企業ネットワークに接続されることで、脆弱性が生じ、サイバー攻撃のエントリー ポイントとなる可能性があります。BYODでは、アクセスを許可する前にすべての端末が特定のセキュリティ基準を満たしていることを確認するのは容易ではありません。
その他のセキュリティ リスク
個人端末は、会社支給のハードウェアと同等のセキュリティ レベルを備えていない場合があり、マルウェア、ウイルス、ハッキング、情報漏洩などの脅威にさらされやすくなります。さらに、従業員がセキュリティ保護されていない端末を使用したり、安全でない公共Wi-Fiネットワークに接続したりすることで、企業ネットワークにセキュリティ上の脅威を意図せずに持ち込む可能性もあります。
BYODに関するその他の判断要素
組織は、BYODによるコストメリット、および生産性への影響についても考慮する必要があります。
BYODのコスト面に関する考慮事項
コスト面では、組織はハードウェアの購入や保守にかかる費用を削減でき、その負担を従業員に移すことができます。生産性の向上は、従業員が慣れた端末を使用することで実現し、迅速なオンボーディング、柔軟なリモート ワーク、常時のコネクティビティを可能にします。
一方で、モバイル端末管理(MDM)ソフトウェア、セキュリティ監視、コンプライアンス管理といった領域では、コストが増加する場合があります。適切なバランスが取れれば、BYODは適切な水準のセキュリティやコンプライアンスを維持しつつ、業務効率と従業員の満足度を向上させることができます。
BYOD導入を円滑に進める実践ガイド
手順 | 内容の要約 |
|---|---|
1. ニーズと要件を評価する | 導入目的と価値を明確化し、対象範囲・端末・従業員を定義。既存システムやインフラの適合性、セキュリティ・コンプライアンスリスクを評価。 |
2. 包括的なBYODポリシーを策定する | 利用ルール・責任・許容範囲を明確化。暗号化・パスワード・セキュリティソフト導入などの要件を定義し、プライバシー保護方針を明示。 |
3. セキュリティ対策を実施する | MDM/EMM/MAM導入により端末管理を実施。VPNやWi-Fiセキュリティで安全な接続を確保し、データ暗号化とOS・アプリの更新を徹底。 |
4. 従業員を教育する | セキュリティ意識向上、フィッシング対策、端末保護方法などを教育。BYODポリシーの理解と責任を促進。 |
5. BYODプログラムを開始する | パイロット運用で問題を特定し、本格展開前に改善。技術サポート体制を整備して導入を支援。 |
6. 監視と管理を実施する | 全端末を継続的に監視し、セキュリティ・プライバシー・コンプライアンスを維持。従業員からのフィードバック体制を構築。 |
7. BYODポリシーと運用を定期的に見直し改善する | 成果と課題を評価し、技術変化・脅威・法規制に対応してポリシーを更新。継続的改善を実施。 |
以下、それぞれ解説します。
1.ニーズと要件を評価する
BYODを導入する目的と、組織にもたらす価値を明確にするために、ニーズ評価を実施します。その上で、BYODプログラムの対象範囲を定義し、対象とする端末と従業員を明確にします。
さらに、既存のシステム、ユーザー、ワークフローを評価し、全体的なパラメータや要件を策定するとともに、個人端末で企業データを扱う際に生じる可能性のあるセキュリティおよびコンプライアンス上のリスクを洗い出します。このプロセスには、ネットワーク、セキュリティ、サポートといった観点から、現行のITインフラがBYODをサポートできる能力を評価する作業も含まれます。
2.包括的なBYODポリシーを策定する
BYODポリシーでは、全員の責任を明確にし、従業員に求められる事項と組織が提供するサポート内容を具体的に示す必要があります。また、業務目的で個人端末を使用する際に、どのような利用が許容され、どのような行為が不適切とされるのかを明確にするため、許容利用範囲を定義することも重要です。
さらに、BYODポリシーには、セキュリティおよびプライバシーに関する詳細な要件を盛り込む必要があります。ポリシーでは、暗号化、パスワード保護、セキュリティ ソフトウェアのインストールなどのセキュリティ プロトコルやシステムの使用および適用方法を明確に定義する必要があります。また、従業員のプライバシーを保護する方法、そして組織が個人端末へアクセスできる状況を明示することで、プライバシーに関する懸念にも対応する必要があります。
3.セキュリティ対策を実施する
モバイル端末管理(MDM)、エンタープライズ モビリティ管理(EMM)、またはモバイル アプリケーション管理(MAM)ソリューションを導入し、社内のシステム、ネットワーク、データへアクセスする個人端末の保護、監視、管理を行います。企業ネットワークへのセキュアなアクセスを確保するために、通常はVPN(Virtual Private Network)やWi-Fiセキュリティ プロトコルが使用されます。機密情報は、個人端末上に保存される際には常に暗号化する必要があります。また、BYOD端末のOSやアプリケーションは定期的に更新する必要があります。
4.従業員を教育する
BYODにおけるセキュリティ対策の重要性、フィッシング攻撃の識別方法、不正アクセスから端末を保護する方法に焦点を当てたトレーニング セッションを実施します。トレーニングでは、従業員の権利と責任を含む、組織のBYODポリシーについても取り上げる必要があります。
5.BYODプログラムを開始する
まずは、一部の従業員を対象にパイロット運用を実施し、本格的に展開する前に潜在的な問題を洗い出します。業務用の端末設定や、問題解決など、技術サポート チームが従業員を支援できる体制を整えます。
6.監視と管理を実施する
社内のデータ、システム、ネットワークへアクセスするすべての端末を継続的に監視し、セキュリティ、プライバシー、コンプライアンス要件を満たしていることを確認します。また、従業員がBYODプログラムに関する意見を提供できるよう、フィードバックの仕組みを整備することも重要です。
7.BYODポリシーと運用を定期的に見直し改善する
従業員やIT担当者から、BYODプログラムの有効性や改善点に関する意見を収集します。また、従業員の生産性、満足度、セキュリティ インシデントといった観点から、BYODプログラムの効果を評価します。さらに、新しい技術を含む課題や脅威に対応し、法規制へのコンプライアンスを維持するために、BYODポリシーの定期的な見直しと更新を実施します。
トラブルを未然に防ぐBYOD利用時の注意点
- VPNを使用せずに公共のWi-Fiを利用しない。
- 可能な場合は端末の暗号化を有効にする。
- データの共有および保存に関する会社のポリシーに従う。
- 端末を最新のセキュリティ パッチで常に更新し、セキュリティ制御を無効化しない。
- アプリケーションのインストールは信頼された承認済みのソースからのみ行う。
- セキュリティ トレーニングや意識向上セッションに参加し、ポリシーに従う。
- 端末を紛失または盗難された場合は、直ちにIT部門へ報告する。
- 承認済みのアプリケーションまたはコンテナを使用して、個人データと業務データを分離する。
- 業務には、会社が承認したアプリケーションを使用する。
- 強力な認証方式(個人識別番号、パスワード、生体認証など)を使用する。
まとめ
リモート ワークやモバイル ワークは今後も継続し、さらに拡大していくと予想されます。それに伴い、BYODも引き続き存在し続けます。組織は、進化するテクノロジーや、それに関連する脆弱性を悪用する脅威に対応するために、BYODポリシーを適切に導入し、継続的に見直す必要があります。
BYODポリシーは、モビリティや従業員満足度の向上から得られるメリットと、セキュリティ侵害やデータ損失といったリスクとのバランスを取るために、慎重な検討と適切な管理が求められます。適切に設計されたBYODポリシーを導入することは、BYODの利点を最大限に活かしつつ、その課題を軽減する上で極めて重要です。
免責事項:本記事の内容は情報提供のみを目的としており、法的助言を意図するものではありません。SailPointは法的助言を提供する立場にはなく、該当する法的事項については法律顧問にご相談されることをお勧めします。