データ ガバナンスは、企業の成長と進化を支える重要な仕組みです。データの収集から廃棄まで、ライフサイクル全体を管理することで、利益をもたらし、リスクを軽減します。膨大かつ多様なデータを扱う現代において、データ ガバナンスは、データの価値を最大化し、コストを最小化するための必須な要素です。人工知能(AI)や機械学習(ML)などの技術の発展、DXの推進により、データ ガバナンスの重要性はますます高まっています。

データ ガバナンスは、セキュリティ、コンプライアンス、サプライチェーン管理、財務、調達、マーケティング、セールスなど、業界を問わず様々なビジネス領域でのデータ活用方法に影響を与える重要な要素です。


データ ガバナンスとは

データ ガバナンスとは、企業がデータの信頼性、機密性、利便性、機能性を確保するための取り組みです。具体的には、手順、社内要件、評価指標を策定し、データポリシーに基づいて収集、管理、保存、廃棄を行います。

データ ガバナンスは、管理すべきデータの種類とそのデータへのアクセス権限を持つユーザー、アプリケーション、テクノロジーを定義し、法規制遵守、業界標準、政府の要件、および組織の目標に基づいてポリシーを策定します。

  • 利用可能なデータと想定する利用者は?
  • 従業員、サードパーティ、アプリケーション、デバイスを含むのデータ利用者による施策の種類は?
  • データ利用シーンと施策実行の条件は?
  • 施策実行方法は?

データ ガバナンス対応の現状

企業が保有するデータのほとんどは、ドキュメント、PDF、スプレッドシートなどの非構造化データです。ほぼ全ての企業が、非構造化データへのアクセス管理が難しいと認識しており、複数のリポジトリに対する単一アクセスソリューションがないこと、データが多すぎること、可視性がないことなど、多くの課題を挙げています。*

*出典:すべてのデータの保存場所と、誰がアクセスできるか把握できていますか?

42%

自社データの保存場所全てを把握できていない

99%

非構造化データへのアクセスの管理に課題がある

76%

非構造化データに関する問題を経験

なぜデータ ガバナンスが重要なのか

データ ガバナンスが企業にとって不可欠である理由は、数多くあります。しかし、データ ガバナンスは、必須要件を満たすためだけのものではありません。次のような理由から、企業にとって有益な取り組みであると言えます。


顧客理解の促進

サービス、更新、クロスセル、アップセルに関する顧客データからインサイトを獲得


製品改善

ユーザー行動や使用状況などのデータから製品設計を更新


セールス・マーケティングの強化

関連情報を活用して権限付与と最適化を促進


組織全体の効率化

連携、統合を強化し、ワークフローを簡素化


迅速な意思決定

リアルタイムデータに基づき戦略を迅速に転換


組織のリソースの最適化

必要に応じてデータをアーカイブへ移動したり、削除したりする仕組みを構築

データ ガバナンス導入のメリット

データ ガバナンスを導入すれば、企業のデータを一元的かつ信頼性の高い方法で可視化できます。データ ガバナンスの主なメリットは、次のとおりです。


信頼できる情報源の構築

データ品質と信頼性を向上し、データに対する共通認識を醸成できます


意思決定と成果の向上

関係者が必要なデータに迅速にアクセスでき、意思決定の質が向上できます


高度なデータイニシアチブの推進

ビジネス・インテリジェンスや機械学習の活用でき、データ分析の強化が可能です


コスト削減

データの効率的な管理が可能になり、無駄な作業の削減をします


コンプライアンス強化

データ管理の向上し、監査業務が簡素化します


サイバーリスクの低減

情報漏洩などのリスクを抑制します


企業評価の向上

機密情報の適切な処理することで、利害関係者から高い信頼を獲得することができます

データ ガバナンス導入のポイント

企業は、データ ガバナンスを導入するにあたり、次のような点を考慮する必要があります。


  • 拡張性
    拡張性の向上と戦略の一貫性を強化し、全ビジネスユニットのデータ ガバナンスを支援が可能
  • 人工知能(AI)と機械学習(ML)
    人工知能(AI)と機械学習(ML)を活用した的確な意思決定を促進し、アプリケーションのパフォーマンスを向上
  • クラウド
    オンプレミスによるコスト増加を回避
  • コスト削減
    データパイプラインを活用し、既存プラットフォームと迅速に統合
  • データ活用
    組織データの検索機能、レポート機能、ベンチマーク機能や、データ品質機能(検証、クレンジング、強化)、データ制御機能(評価および保守)。メタデータ開発(ソース、日付、タイプ、タグ)を含むデータ記録の蓄積。
  • セルフサービス式データスチュワードシップ
    データをプロファイリングし、組織のデータ ガバナンスポリシーの実施を監視
  • リスク管理とコスト効率
    データの保持、アーカイブ、削除の自動化
  • コンテンツ管理機能
    ドキュメントをデジタル化し、適切なコンテンツの運用やシステムへの組み込む機能

データ ガバナンスを成功させる

企業の全レベルでデータ ガバナンスの目標を定義し、すべての関係者とチームメンバーが自分の役割を理解し、それを達成する必要があります。データ ガバナンスの目標設定の例として、以下が挙げられます。


  • データの一貫性向上
    意思決定のための信頼できるデータ基盤を構築
  • 収益向上とコスト削減
    データに基づいた最適な意思決定
  • 継続的な改善
    KPIに基づいた改善サイクルの確立
  • データセキュリティとデータ品質の向上
    責任の明確化によるデータ管理強化
  • データ所有権の明確化
    データ配布ポリシーの策定
  • メタデータ管理
    データの収集と使用の制御
  • チームワークの向上
    データ共有によるスムーズな連携、統合
  • コンプライアンス遵守
    リスク低減と信頼性の向上

データ ガバナンスの役割

前述したように、データ ガバナンスを導入するには、全社を挙げた取り組みが必要です。特に重要な役割には、次のようなものがあります。


マスターデータ ガバナンスマネージャー

企業全体のマスターデータの制御とガバナンスを監督
データ標準とポリシーの策定・実行・管理


データスチュワード

データの所有権と責任を管理
データ標準とポリシーの遵守を徹底
データエンティティと属性の専門家
データ ガバナンスプロセスの改善策を提案


ソリューション/データ ガバナンスアーキテクト

ソリューションの設計とアプリケーションを指揮


データカストディアン

データリソースのオンボーディング、保守、廃止を管理


データオーナー

データリソースの最終的な責任者
意思決定と実行の権限を持つ


データアナリスト

分析を通じて傾向を特定
レポートを提供


データストラテジスト

分析に基づいて計画を立案・導入


コンプライアンススペシャリスト

必須基準やコンプライアンス遵守を管理

データ ガバナンスフレームワーク

データは企業が成功する鍵となるデジタル資産で、その活用には適切なデータ ガバナンスフレームワークが必要です。このフレームワークは、組織の戦略、目標、目的、コンプライアンス要件、業界プロトコルを支え、データ標準の監視、役割と責任の明確化、部門全体の成果測定を実現します。最適な運用モデルを導入することで、フレームワークを日常業務にシームレスに統合し、組織全体でデータの力を活用することができます。

データ ガバナンスフレームワークは、次の5つの要素で構成されています。


  1. データモデル
    データフロー(入力、ストレージ、出力)を定義
    データモデルに適用可能なガイドライン、ポリシー、慣行、手法、手順を策定
  2. 組織構造と説明責任
    データ ガバナンスに関する責任と権限を明確化
  3. データ資産管理
    データ ガバナンスフレームワーク制定後のあらゆる関連データと期待される成果を管理
  4. データ分類と配布
    定義されたチャネルを使用したデータの分類と配布プロセスを構築
    特に機密データの保護に重点
  5. 測定とレポート
    指標を含む測定計画を策定
    データ ガバナンスフレームワークの改善に役立つインサイトを獲得

データ ガバナンスの実現に向けて

データ ガバナンスを上手に推進するためには、チームと関係者の理解と協力を確保しながら、効果的なコミュニケーションが不可欠です。継続的に取り組むために、以下の事柄に留意してください。


  • ビジネスケースの作成と共有
    データ ガバナンスの必要性、メリット、リスクを明確に示し、チームの理解と協力を得るようにしましょう
  • エグゼクティブ・スポンサーの選定
    データ ガバナンスプログラムの普及を促進し、軌道に乗せるためのエグゼクティブ・スポンサーを選定します
  • プロジェクトではなく継続的な取り組みとして捉える
    データ ガバナンスをプロジェクトとして扱うのではなく、継続的に取り組めるようリソースを確保しましょう
  • 目標設定と進捗管理
    具体的な目標を設定し、定期的に進捗を測定し、改善を図りましょう
  • 用語集の作成と共有
    共通言語を確立し、コミュニケーションを円滑にしましょう
  • オープンなコミュニケーション
    社内外の関係者とのコミュニケーションを図り、理解と協力を得るようにしましょう

まとめ

企業は、顧客、取引先、サプライヤーなど、様々な関係者に関する膨大なデータを所有しています。これらの情報は、組織や市場に関する知識を深め、ビジネス上の意思決定を改善するうえで非常に重要です。データ ガバナンスは、データの品質、信頼性、アクセス、プライバシー、セキュリティを確保し、適切な目的のために活用するための仕組みです。

多くの競合他社がデータ活用に苦慮している今、データ ガバナンスを上手に活用することで、ビジネス上の意思決定の改善やコンプライアンス要件の遵守、情報漏洩のリスク回避など企業にとって大きな強みとなるでしょう。

よくある質問

データ ガバナンスフレームワークとは?

データ ガバナンスフレームワークは、データモデル、組織構造と説明責任、データ資産管理、データ分類と配布、測定とレポートの5つの要素から構成されています。このフレームワークは、組織の戦略、目標、コンプライアンス、業界規格を支援し、データ標準の監視、役割の明確化、部門の成果の測定を可能にします。

データ ガバナンスとデータマネジメントの違いは何ですか?

データ ガバナンスとデータマネジメントは、車の両輪のような関係です。データ ガバナンスは、データのライフサイクル全体を管理する基盤であり、データマネジメントはその基盤に基づき、具体的なデータ収集、分析、活用などの活動を行います。

データスチュワードシップとデータ ガバナンスとの違いは何ですか?

データスチュワードシップは、データ ガバナンスの一部であり、手順に重点を置いた実践です。戦略、役割、ポリシー、プロセスなどの策定ではなく、既存のポリシーやプロセスを理解し、実践することに重点を置きます。

マスターデータ管理とデータ ガバナンスとの違いは何ですか?

マスターデータ管理(MDM)は、企業の主要なエンティティ(サプライヤー、顧客、製品など)を特定し、それらのデータから得られる価値を高めることに重点を置いています。データ ガバナンスは、マスターデータ管理(MDM)の基盤となるフレームワークです。マスターデータ管理(MDM)とデータ ガバナンスは、相乗効果を生み出すことで、企業のデータ活用を飛躍的に向上させます。

データプライバシーとデータ ガバナンスの違いは何ですか?

データプライバシーは、データ ガバナンスの一部であり、データの適切な管理と利用を目的としています。データ ガバナンスは、プライバシーを含むさまざまな要素を包含し、ガバナンスプログラム全体でデータプライバシーに関するプロセスを導入することで、企業はデータの所有、保存場所、使用方法を把握することができます。

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